製品を海外に輸出するためには、各国の法規制に対応する必要があります。また、製品の輸出後も、法規制の制定や改定が行われますので、定期的に最新情報を確認しなければなりません。ここでは、目的に応じた法規制の調べ方を紹介します。
製品のCEマーキングの大まかな流れを図1に示します。
大枠要求事項である指令または規則を選択し、その具体的検証ツールである整合規格を選択します。次に、モジュールと言われる適合性評価方式を決定し、適合性評価(試験実施のほか、リスクアセスメント等も必要)を行い、技術文書を作成します。これらを完了して、適合宣言書(DoC)を作成し、製品に「CE」のマークを貼り付けて出荷することができます。CEマーキングの制度は、製造者や輸入者が自ら適合を宣言して(自己宣言)、製品に「CE」マークを表示するものであって、第三者による認証ではありません。また、CEマーキングの対応後も、部品変更が生じた場合や規格の更新などにも対応する必要があります。
図1 CEマーキング制度の枠組みと対応の流れ
指令や規則の制定や改定(整合規格の変更を含む)は欧州官報(Official Journal of the European Union)で公示されます。また、整合規格リストは欧州委員会のHarmonised Standards(外部リンク)からサマリーを入手することができます。
EUR-Lex(外部リンク)は、欧州官報などが無料で公開されているEU法のデータベースです。 EUR-Lex(外部リンク)では、欧州官報の統合版だけでなく修正履歴も閲覧することができ、閲覧しているページが最新版であるかの確認は、図2の画面右側に表示されている日付で判断することができます。EUR-Lex(外部リンク)の各項目に関する説明は、国立国会図書館サーチ リサーチナビ(外部リンク)の解説を参考にしてください。
図2 欧州官報の例(RoHS指令2011/65/EU)
欧州委員会のHarmonised Standards(外部リンク)で、整合規格リストのサマリー(Summary of reference of harmonized standards)のExcel版またはPDF版を入手することができます。また、Harmonised Standards(外部リンク)で、各指令や規則の欧州官報やガイダンス等も確認することができます。整合規格が改定された場合、適合性の確認が必要になる場合がありますので、CEマーキング対応後も整合規格を定期的に確認する必要があります。
MTEPの海外規格閲覧サービスで、すべてのBS EN規格をライブラリーサーバーで閲覧いただくことができます。また、一部の規格は邦訳版を所有していますので、是非ご利用ください。
参考情報:
REACHとはRegistration(登録), Evaluation(評価), Authorisation(認可)and Restriction(制限)of Chemicals(化学物質)の頭文字をとった化学物質規制です。REACHは、化学品だけでなく、化学物質が含まれる可能性のあるさまざまな成形品にも適用されます。化学物質を安全に使用するためには、成形品の情報伝達が不可欠であるため、REACH規則に成形品中の物質に関する義務が規定されています。ここでは、成形品中の物質に関する義務への対応に関係する情報の調べ方を紹介します。
成形品中の物質に関する情報伝達:REACH規則33条
対象: 成形品の供給者
義務: CL物質※1が0.1重量%を超える量を含有する場合
➡ 成形品の供給者への安全性に関する情報や物質名などの情報提供
成形品中の物質の通知:REACH規則7条(2)
対象:成形品の製造者、輸入業者
義務:CL物質が0.1重量%を超える量および1企業につき年間1トンを超える量を含む製品の場合
➡ 欧州化学品庁(ECHA)に届出
また、廃棄物枠組み指令(WFD:Waste Framework Directive)に基づくSCIP(スキップ)登録 ※2という義務もあります。
※1 Candidate List of substances of very high concern for Authorisationの略で「CLS」や「SVHC」とも呼ばれます。
※2 ECHAが策定するSVHC含有情報を登録するデータベースで、CL物質の濃度が0.1wt%を超える場合は、CL物質の含有情報を登録提供することが義務付けられています。
ECHA(外部リンク)のCandidate List of substances of very high concern for Authorisation(外部リンク)で最新のCL物質を調べることができます。
ECHA(外部リンク)のウェブサイト(トップページ)からは、「SEARCH FOR CHEMICALS」をマウスオーバーすると図3の画面が表示されますので、「Candidate List of substances of very high concern for Authorisation」を選択します。また、この画面から、認可物質リスト(Authorisation List)や制限物質(Substances Restricted under REACH)のページを開くことができます。
なお、CL物質は年2回(6月、12月頃)に追加されます。
図3 ECHA(外部リンク)
また、NITE-CHRIP(外部リンク)(NITE化学物資総合情報提供システム)で、物質ごとの各国の法規制情報を調べることができます。日本語で検索できるので便利です。
chemSHERPAは経済産業省主導で制作されたサプライチェーンにおける製品含有化学物質の情報伝達データ作成支援ツールです。chemSHERPAは化学物質規制の改正に伴ってアップデートされますので、自社の化学物質管理に大変有用なツールです。アーティクルマネージメント推進協議会(JAMP)(外部リンク)がFAQや各種ガイダンスを公開しています。
参考情報:
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免責事項
当解説は法規制に関する都産技研の見解等ではありません。関係機関発行の原文によりご判断ください。本解説の情報に基づいて行った行為により生じたいかなる結果に関しても、都産技研は責任を負いかねますのでご了承ください。
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MTEPでは、このほかにも海外の法規制に関するご相談に対応しております。お困りの際は、ぜひお問い合わせください。
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