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【墨田支所】身体運動と物体形状の3次元データの活用に関する支援事例

印刷用ページを表示する 更新日:2024年6月1日更新

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墨田支所の身体運動計測分野では、製品の身体適合性に関する技術支援を担当しています。本稿では身体運動と物体形状の3次元データの活用に関する支援事例としまして、2024年2月に開催した身体動作解析に関する講習会について報告し、また、2024年4月から新規に機器利用での運用を開始した機器(三次元デジタイザ)を紹介します。

墨田支所 TEL. 03-3624-3731

(外部リンク)

身体動作解析に関する講習会の開催

墨田支所では、3次元空間での身体の運動を数値データ(動作データ)として収録できる光学式モーションキャプチャシステムなどの設備を運用しています。これらの機器の利用に関する講習会(「Python とオープンソースソフトウェア・オープンデータによる身体動作解析の基礎」)を2024年2月に墨田支所にて開催しました。

身体動作解析(分析)とは、カメラ映像やモーションキャプチャシステムで収録した3次元空間での動作データから身体動作を定量的に捉え、解剖学的・力学的な観点で解釈・評価を行う技術・技能を意味します。モーションキャプチャシステムの応用例としましては、ゲームや映画などの3次元コンピュータグラフィクス(3DCG)の映像制作がよく知られていますが、その開発の初期から整形外科・理学療法(リハビリテーション)・生体力学(バイオメカニクス)分野への応用が行われています。また、これらに関連するスポーツ科学分野・人間工学分野・ロボティクス分野では、身体に装着する製品(スポーツウェアやアシストスーツなど)の特性によって変化する身体動作の比較に利用されています。墨田支所での研究開発でも光学式モーションキャプチャシステムを活用しています(「トップ選手向け車いすの技術を活用した、一般選手向けバドミントン用車いすの開発」、TIRI NEWS 2024年1月15日付 )。

身体動作解析におけるデータ処理は、複数の段階があり、例えば、次のように分類できます。

  (1) ​身体動作データそのものの観察・特徴(周期性・ピーク値など)の理解・抽出
  (2) 運動学(逆運動学)による解析
  (3) 動力学(逆動力学)による解析
  (4) 統計的解析

本講習会では、上記の中で比較的に容易な(1)の段階を想定し、具体的な機器を使用した動作データの収録の手順や、データ処理についての講習を行いました(なお、被験者の役割は都産技研職員が担当しています)。

講習会内容(1)  動作データの収録

本講習会で使用した機器は下記の3種類です。

  A. 慣性センサ式モーションキャプチャシステム (Movella xsens MVN Awinda)
  B. 光学式モーションキャプチャシステム (Motion Analysis Corporation (MAC) 3D Real-time System)
  C. フォースプレート (AMTI AccuGait)

慣性センサは、3次元空間での物体の姿勢(傾き)の測定に使用されているセンサです(図1(左)のオレンジ色のケースに内蔵されています)​。慣性センサは、例えば、スマートフォンで画面の向きを自動で検出して表示の向きを切り替える用途などに利用されています。慣性センサは、細かく分けると、姿勢に関する3種類の物理量(3軸加速度、3軸回転速度、磁場の3次元方向ベクトル)を検出します。慣性センサ式モーションキャプチャシステムでは、慣性センサを身体の各部位(腰、肩、上腕などの17箇所)に取付け、各センサの姿勢データを統合して全身の動作を推定・収録します。

図1 左: 慣性センサの装着、右: フォースプレートによる測定
図1 左: 慣性センサの装着、右: フォースプレートによる測定

 

光学式モーションキャプチャシステム(図2)は複数(2台以上)のカメラ映像を撮影し、三角測量の原理(1辺と両端の角度が決まれば、三角形の残りの2辺の長さや角度が決まること)に基づいて、映像の各コマから3次元空間での身体部位の位置を推定・収録します。映像の中で身体とそれ以外の部分の判別を容易に行うために、撮影の際には身体の各部位に反射マーカと呼ばれる赤外光を反射する素材で被覆された球体(直径 1 cm前後)を取り付けます(詳細は、TIRI NEWS の設備紹介(2022年9月1日付)をご覧ください)。

図2 光学式モーションキャプチャシステムで収録した動作データの確認
図2 光学式モーションキャプチャシステムで収録した動作データの確認

 

フォースプレート(図1(右))は、金属の板にかかっている力(床反力; 3軸成分)、床反力のモーメント(回転に関する量)、力の代表点(圧力中心)の位置を時系列データとして収録できます。フォースプレートのデータ収録のシステムは、光学式モーションキャプチャシステムに統合されているため、カメラ映像の撮影と同期して収録が行われます(フォースプレートは、応用分野によって、フォースプラットフォーム、床反力計、重心動揺計などの別名で呼称されています)。

本講習会では各機器の原理・制約を解説し、被験者に慣性センサあるいは反射マーカを取り付ける作業などを実演しました。このように具体的に動作データを収録する手順を示した後に、収録したデータのファイル形式(構造)について説明しました。

 

講習会内容(2)  データ処理

慣性センサ式あるいは光学式モーションキャプチャシステムで収録した動作データは、テキストファイルとして出力可能であり、原理的には表計算ソフトウェアで読み込んでデータ処理を行うことができます。一方、全身の動作データの収録の場合、慣性センサの個数は 17個、反射マーカの個数は 30~60個以上にもなるため、表計算ソフトウェアでのデータ処理には困難があります。本格的な研究開発には動作解析のための専用の商用ソフトウェアが利用されていますが、受講者がこのようなソフトウェアを講習後に利用することは、導入コストの観点で敷居が高いため、本講習では、オープンソースソフトウェアを利用する方法を紹介しました。

利用したオープンソースソフトウェアは、具体的には、Python(プログラムの実行環境) 、Pythonによるグラフ作成のためのパッケージ(matplotlib) 、動作データの読込機能を備えたパッケージ(pandas、ezc3d、kinetics toolkit)、プログラムの実行指示や結果の表示を Web ブラウザ上で簡易に行うためのパッケージ(JupyterLab)などです。

Python の本格的な活用には、プログラミングの技能が必要となりますが、グラフ作成のように用途を限定すれば、比較的にプログラムは定型的な内容となるため、本講習では、このような定型的なプログラムの例を事前に用意し、受講者ごとの実行環境でプログラムの実行を試していただきました。この実行環境としては、ディスプレイやキーボードを接続してパソコンの代替として使用できる組込機器(Raspberry Pi 4 Model B)を準備しました。

図3 データ処理についての実習の様子
図3 データ処理についての実習の様子

以上のように、本講習会は実演を見ながら、実際の動作解析を体験できる講習会として開催しました。

 

今後の講習会について

上記と同じ内容の講習会を2024年8月後半に開催予定です(定員5名)。受講申込手続きにつきましては、今後、都産技研のウェブページに掲載する予定となっています。

 

新規に運用を開始した機器の紹介

2024年4月から墨田支所にて新規にパターン投影方式の三次元スキャナ (三次元デジタイザ) の運用を開始しました。パターン投影方式の三次元スキャナでは、静止している測定対象物について、詳細に形状を測定することができます。この測定においても、光学式モーションキャプチャシステムと同様に三角測量の原理が用いられています。大きな違いは、測定対象にマーカを貼付する代わりに縞模様の光を当てながら撮影していることで、これにより表面の位置を点群として高密度に取り込むことを可能としています。取り込んだ点群はポリゴン(小さな三角形の集まり)として出力することで、3次元データ同士の比較や3Dプリント等で使用することができるようになります。写真は墨田支所の装置(GOM社製ATOS 5)で椅子を測定している様子で、視野の広いレンズを使用して座面全体を測定しています。全体(周)を測定する場合は、測定対象物の向きを変えて測定を繰り返した後に、データをつなぎ合わせます。この装置についても機器利用していただくことができます。

図4 測定の様子
図4 測定の様子

 

表1 設備の概要
機種ATOS 5(GOM社)
測定範囲1000×750×750 mm
画素数※112M
光源青色LED※2
使用料金※31時間につき3,860円(中小企業料金)

※1 点間距離は0.236 mmになります。     
※2 カラー画像の取得はできません。      
※3 職員が立ち会う場合は30分につき1,130円必要です(中小企業料金)。

この三次元デジタイザも光学式モーションキャプチャシステムと同様に,墨田支所の研究開発で活用しています(「トップ選手向け車いすの技術を活用した、一般選手向けバドミントン用車いすの開発」、TIRI NEWS 2024年1月15日付


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