左上:車載放射イミュニティ試験設備、右上:車載放射エミッション測定設備、下:多摩テクノプラザ
都産技研多摩テクノプラザでは、都内中小企業のモビリティ産業への参入を支援するため、2022年度から「ゼロエミッションに資するモビリティ産業支援事業」を開始しました。本稿では、車載機器・小型モビリティに関する技術支援およびセミナー・研究会についてご紹介します。
多摩テクノプラザ TEL. 042-500-2300
地球規模での気温上昇、気候変動など地球環境問題への対応が必然となっており、その問題の原因であるCO2などの温室効果ガスは、排出の抑制が求められています。
東京都は、温室効果ガスの抑制のため、「2050年にCO2排出実質ゼロ」の目標を掲げ、ゼロエミッション東京の実現に向けて取り組んでいます。目標達成のための方策の一つが、自動車に代表されるモビリティ産業のZEV(ゼロエミッション・ビークル)の普及です。
ZEVとは、走行時にCO2などの排出ガスを出さない電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)などを指します。ZEVによる電動化・軽量化により、環境負荷の低減が期待されています。従来のガソリン車からZEVへ転換されることにより、産業構造の大幅な変革が予想されます。
都産技研多摩テクノプラザでは、車載機器や小型モビリティの安全性や信頼性を担保するため、製品のEMC試験に関するサービスを2019年度から開始しました。EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁両立性)試験とは、電磁ノイズに関する試験です。
(1)製品から強い電磁ノイズが放出されないこと、(2)外来からの電磁ノイズに対して誤動作しないことの両方の要求を満たすことがさまざまな自動車規格で定められており、これらの製品を出荷する場合には必須の試験です。
また、モビリティ分野では、走行距離の向上のための部材の軽量化が求められております。多摩テクノプラザでは、炭素繊維とプラスチックを複合した素材であるCFRP( Carbon Fiber Reinforced Plastic)といった新たな部材に取り組んできました。
そこで、モビリティ産業への都内中小企業の進出を加速させるため、多摩テクノプラザでは2022年度から「ゼロエミッションに資するモビリティ産業支援事業」を開始しました。本事業を通じて、モビリティ産業にかかわる都内中小企業の支援を行います。
本事業では、車載機器・小型モビリティに関する技術支援の拡充とセミナー・研究会の開催を柱としています。
車載機器・小型モビリティに関する技術支援のため、以下の機器を導入し技術支援を行います。
モビリティ分野の構造転換のためのセミナーを開催します。
車載機器や小型モビリティ分野への製品化・事業化促進のための研究会を立ち上げます。
車載機器・小型モビリティに関する技術支援の拡充のため、2022年度ではEMC試験設備を中心とした以下の5機種を導入し、支援を開始する予定です。
機器名 | 内容 |
---|---|
◆用途:車載機器のEMCの評価 ◆機器の概要 【近接照射試験】無線機・携帯電話などの電波を近接で照射し、誤動作しないことを確認する。 【BCI試験】ワイヤハーネスに電磁ノイズを注入し、誤動作しないことを確認する。 ◆評価対象:車載機器(特に電源ライン、信号ライン等を持つカメラ、センサやアクチュエータ、表示機器等) ◆試験規格 【近接照射試験】ISO11452-9 【BCI試験】ISO11452-4 | |
◆用途:車載・小型モビリティ用情報機器のEMCの評価 ◆機器の概要:製品から放出される伝導・放射ノイズの強さを測定する機器 ◆評価対象:電動車いすや搬送用小型モビリティ向けおよびICT端末としての機能を有するコネクティッドカーと通信を行う情報通信機器 ◆試験規格:CISPR規格等 | |
◆用途:車載・小型モビリティ用情報機器のEMCの評価 ◆機器の概要:電磁波を製品に照射して、誤動作が起こらないことを確認する。 ◆評価対象:ICT端末としての機能を有するコネクティッドカーと通信を行う情報通信機器。小型モビリティ(パーソナルモビリティ、ドローン)など。 ◆試験規格:IEC61000-4-3 | |
◆用途:車載機器電子回路の信号品質の評価 ◆機器の概要:電子回路に高周波信号を伝送し、回路内を伝達する信号の大きさを評価する機器。 ◆評価対象:車載機器や小型モビリティの電子回路、センサ制御回路、ハイブリッド電気自動車/電気自動車のモーター制御に使用するパワーデバイスを使用した電子回路。 ◆機器の特徴:周波数:9 kHz~20 GHz | |
◆用途:製品の信頼性評価 ◆機器の概要:X線を照射し、非破壊で製品の内部構造やクラックなどの欠陥の観察を行う機器。 ◆観察対象:車載機器の電子デバイスの配線や電子回路実装における鉛フリーはんだの内部。 ◆機器の特徴:高解像度フラットパネル検出器により精細な画像が得られる。 |
2022年9月16日(金曜日)および10月26日(水曜日)に、車載電子機器や小型モビリティ分野への参入を検討されている企業さまを対象とした「モビリティ産業参入促進セミナー」を開催します。
モビリティ開発について経験豊富な講師をお招きし、モビリティ製品開発に必要な情報を講演いただきます。また、都産技研が保有するEMC試験設備(カメラ・液晶ディスプレイなど自動車搭載用電子機器や小型モビリティ試験用)の紹介、見学会も行います。
詳細・申込はセミナーページをご確認ください。
ガソリン車から電気自動車への転換によるゼロエミッションに伴うモビリティ産業の現状と関連技術や、生活で利用されるスマートモビリティの安全性確保のための評価手法について、講演いただきます。
いずれも参加費は無料です。皆さまのご参加をお待ちしております。
Tweet(外部リンク)
※記事中の情報は掲載当時のものとなります。