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特定の音を聞いたときに “心地よい” と感じたり、逆に “気になる” と感じたことは誰しも経験があると思います。これは自然界の音や音楽に限らず、家電製品や車などさまざまな製品から発する音にも言えることであり、製品から発する音の印象は製品価値を左右します。
近年、製品音の印象改善手法として「人の感覚を考慮した製品のサウンドデザイン」が着目されています。例えば、音量は小さくても不快に感じる音を改善したり、 “高級感のある音”、“力強い音” のように製品の印象を向上させる音作りをすることで、競争力の高い製品の開発が可能となります。
しかし、ある音が “どの程度心地よい音か(気になる音か)” といった音質の客観的な評価は難しく、従来の騒音レベル測定や周波数分析などの音響分析だけでは効果的なサウンドデザインができていないのが現状です。
そこで本記事では、サウンドデザインによる製品開発を支援するための、人の感覚を考慮した音の分析や評価が可能な「心理音響分析システム」についてご紹介します。
本システムでは、以下のことが実施可能です。
人の耳位置にマイクロホンが設置されている機器です。これにより、実際に人が聞く音を収録して分析することが可能となります。
また、収録した音の大きさや高さを分析して、容易に音の一部分だけを聴取したり、その音だけ削除した音を聴取することができます。これにより、不快な音がどこにあるか、その音をどの程度小さくすれば快適な音になるかを直感的にシミュレートすることができます。
図1 収録した音のシミュレート例
周波数(縦軸)と音圧レベル(横軸)の関係をスペクトログラムで表示。黒色部分は音を削除した部分。
一般的に製品音は、騒音レベルと呼ばれる評価量によって表されます。「動作音○○dB(デシベル)」という表現で広く用いられており、値の小さな製品ほど静かな製品とされています。
しかし、騒音レベルが小さくても “気になる”、“不快” に感じる場合があります。これは、騒音レベルでは音の “高さ” や “時間変動性” などによる音質の違いを表現できないためです。
そこで、人が感じる音に対する印象の違いを評価する指標の一つとして、音の物理的な特徴から印象を予測して数値化する音質評価指標(表1)という評価量が提案されており、本システムでは各種の音質評価指標を算出することができます。
音質の評価指標 | 単位 | 解説 |
---|---|---|
ラウドネス (大きさ) | sone | 騒音レベルよりも人の感覚に近い音の大きさを評価可能。 音の大きさを比較するときに有効。 |
シャープネス (甲高さ) | acum | 高い音の成分が多いと値が大きくなる。 値が大きいと煩わしく感じることが多い。 |
ラフネス (粗さ感) | asper | カチカチ、カタカタ等の音により感じる音の粗さ感を 評価可能。 |
変動強度 (変動感) | vacil | うなりのように音の大きさがゆっくりと変動する音の 変動感を評価可能。 |
Tone to noise ratio(純音感) | - | ピー、キーンなどの音により感じる純音感を評価可能。 値が大きいと煩わしく感じることが多い。 |
例えば、“甲高く耳障りな音” をシャープネスで評価、“うなって聞こえる不快音” を変動強度で評価することにより、製品音の特徴やその程度を数値として定量的に捉えることができ、改善すべき音の特徴や対策方法が明確になります。
心理音響評価量を活用することにより、従来の騒音レベルを小さくする静音化対策だけではなく、“音量は変わらなくても気にならない音にする” といった新たな対策方法や、その音があることで “心地よく感じる”、“高級感を感じる” といった快音化による製品の付加価値を向上させる製品開発が期待できます。
図2 音質評価指標算出結果の一例
(上:スペシフィックラウドネス、中央:ラウドネスvs 時間、下:ラフネスvs 時間)
図2に示す例のように、音の高さごとの音量感(スペシフィックラウドネス)や、音の粗さ感(ラフネス)によって、音質を多面的に評価することができます。
※以下の動画では、音質評価についてデモを使って分かりやすく紹介しております。こちらもぜひご覧ください。
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